私が何も言わずとも、カフェラテを出してくれる店がある。
私が何も言わずとも、カフェラテを出してくれる店がある。
こう言うと一瞬格好良く聞こえるのだが、
残念ながらそれはオシャレなカフェや渋い喫茶店などではない。
会社から数分のところにある、特に珍しくもないサンマルクカフェだ。
純喫茶や老舗の定食屋、有名なカレー屋などが犇めく街なので、
孤独のグルメごっこをしたいのは山々なのだが、
45分休憩ではとてもじゃないがゆっくりできない。
このような食事処ではせかせか食べるものではない。
せっかく行くならゆっくりしたい。
そうなると、500円でパンもコーヒーも頼め、
すぐに受け取ることができ、
なおかつ充電もさせてくれるので作業もできる、
そしてなによりチョコクロがぶれずに美味しい、
安定のサンマルクになるわけだ。
サンマルクには週3以上通っており、
ポイントカードは束のようになっている。
そろそろ使おうと思いつつ、
ランチ以外でわざわざ行かないのでなかなか使う機会がない。
決まって平日昼に行くことや、
店内で食べるにもかかわらず、
いつもカフェラテのSをテイクアウトカップで頼むという
面倒臭い注文をしているため、どうやら覚えられているようだ。
なので、レジに並ぶと
「店内でカフェラテのS、テイクアウトカップですよね?
いつもご利用ありがとうございます!」と言われる。
少し恥ずかしいのだが、
覚えてくれているのは有り難いし、やはり嬉しい。
そんな顔パスレベルのサンマルクなのだが、
先日少し様子が違った。
いつものようにレジに並び、
いつものようにお姉さんが接客してくれたのだが、
なんと「お客様は店内でお召し上がりですか?
ご注文をお伺いします。」と言われたのだ。
「もしかして、マニュアル通りに接客しろと
言われたのかな?私が嫌そうにしてるかと思って
気遣ってくれちゃったのかな?」と少し驚き、
ほんの少し寂しい気持ちになりながら
「はい、店内でカフェラテの…」と答えたところ…
「あ!!!テイクアウトカップですね?!」と返された。
どうやら声で私であると気づいたようだ。
つまり、見た目では私だと気づかなかったというわけだ。
それもそのはず。その日は久しぶりに、
私は眼鏡ではなくコンタクトをつけ、
まともに化粧をしていたのだ。
常連客である私と、コンタクトをつけて化粧をした私を、
お姉さんは同一人物だとは思わなかったというわけだ。
連日寝不足でコンタクトをつけるのが痛いのと、
目が悪すぎてコンタクトをつけないと
自分の顔が見えないからアイメイクができないというのと、
眼鏡をかければ顔なんかどうせわからないというのと、
コンタクトをして化粧するのに時間を割くくらいなら
少しでも多く寝ていたいというのとで、
ここ最近はずっと眼鏡で、ファンデーションに
眉毛くらいしか化粧をしていなかったのだ。
お客さんに会う日を除けば、会社にコンタクトをつけて、
きちんと化粧をして行ったのは数ヶ月ぶりかもしれない。
自分ではあまり変わらない気もするのだが、
コンタクトや化粧は恐ろしいものだ。
同じような服を着て、
同じような髪型をしていたとしても、
週3以上会う人に同一人物だと思われないのである。
私を私だと気づかなかったことで、
お姉さんは明らかに動揺していた。
変に気を遣わせてしまい、
大変申し訳ないことをしたと思っている。
これからは、コンタクトで化粧をした私としても、
サンマルクの常連になってみせる。
そうしたらまた「カフェラテですよね?」って
微笑みかけてくれると信じている。
これ以上、お姉さんを困らせないように、
私も早起き頑張ろう。